第1部 第8章

alice

ルーアンからダンケルクへの道

「アリス、あんた何か隠してるでしょ?」

「え……?」

それは唐突な質問だった。尋ねられたアリスは、どこかボーッとしていた。

対照的な反応を示したのはエリオルだった。明らかに狼狽しながら、アリスの顔を窺っている。

セティアはそんなエリオルを次の標的にした。

「エリオル、あんたも何か知ってるのは分かってるわ。アリスのために黙ってるんでしょうけど、それじゃ何も解決しないわよ?」

「うぅ……、だって僕もまだ整理がついていないんだもの……」

そう言って、アリスの方を見たエリオルは、アリスを勇気づけるように言った。

「アリス……、みんなに話してみよう。一人で悩んでいたってしょうがないよ。」

「ぅん……、分かった……」

アリスは火口での出来事を鮮明に語った。誰一人、口を挟むことなくアリスの話に聞き入った。そして、アリスが話し終わると、セティアが尋ねた。

「それじゃあ、ヘルムートがあんたを助けた時に言った言葉が、あんたのお父さんの言葉と同じだったってわけ?」

「うん……、それに、火口に落ちそうな私を助けてくれたし……。」

セティアは少し考え込んでから言った。

「でも、そのお父さんの言葉って、あんたがまだ幼い頃に聞いた言葉なんでしょう? 勘違いとかじゃないの?」

「それは無いはずだよ!」

エリオルは思わず口に出してしまった。案の定、セティアに突っ込まれる。

「何で、あんたが断言できるのよ?」

「そ、それは……」

エリオルは答えに困った。まさか、アリスの父ロイの最期の光景を、夢で見たとは言えない。そんなこと信じてもらえないだろうし、だいたい、時々見るあの不思議な夢のことは、エリオルも不思議に思っている。あれは本当に過去の情景なのか。なぜ自分がそのような夢を見るのか。今でも謎が多いのだ。

そんなエリオルを注意深く見ていたフォルトが、そっと助け舟を出した。

「まあ、仮にその言葉がロイ殿の言葉だったとして……」

フォルトは続ける。

「問題なのは、なぜヘルムートの口からそんな言葉が出たのか。しかも同時に、殺そうとしていた相手を急に助けている。アリス、君はあれがお父上だと考えているんだね。」

「うん……、私には何となく分かるの……。あれは間違いなくお父さんだって。でも、だからこそ、もう二度と会えないんだって。だってお父さんは……」

アリスは涙ぐみながら語る。

「私を助けて、火の山の火口に落ちて……、今度こそ、死んでしまったから……」

重苦しい沈黙が辺りを包んだ。

「……ふぅ。どう思う? フォルト?」

セティアが、ため息まじりにフォルトに尋ねる。

フォルトは真面目な顔をしてアリスに向き合った。

「落ち着いて聞いてほしい。これは、あくまで僕の憶測だ。だけど、君の助けにはなると思う。」

まず、とフォルトは語りだす。

「教会の文献に "憑依" というものがある。ある存在の魂や精神だけが他の存在の身体に乗り移ることだと言われている。つまり、あの黒衣の男は、『ヘルムート』であり、同時に『ロイ』殿なのかもしれない。伝え聞く話では、ヘルムートを倒したのはロイ殿で、その時に両者とも姿を消しているという。つまり、どちらも死んでいないということもあり得るわけだ。そして、ロイ殿の身体に瀕死のヘルムートが憑依したのではないかと僕は考えている。」

そこで、少し顔を曇らせた。

「ただし、疑問は残る。あの黒衣の男は、ヘルムートとしての魔力や異能を操っていた。そこにロイ殿の精神の表出が見られるわけだ。これではまるで、ヘルムートの身体にロイ殿の精神が憑依しているかのようだ……。」

「なんか、ややこしくなってきたな……」

そう思うのはジェラルドだけでなく、皆、多かれ少なかれ混乱はしているようだ。

そこでフォルトは、さらに続けた。

「少し、話を変えよう。何にせよ、あの黒衣の男はヘルムートほどの力を備えている。ドルラン鉱山での一件もある。つまり僕が言いたいのは、火の山の火口に落ちたぐらいで彼は死んではいないのではないかということさ。生きているのなら、何かしら手も打てるかもしれない。とにかく、この件は僕たちの手には余ることだ。」

そこで、セティアの方を見て言った。

「セティア。教皇様のお知恵をお借りしよう。ダンケルクに着いたら、教会都市トゥールに手紙を出すんだ。返事次第では、いったんトゥールに引き返し、今後の方針を立てる必要があるかもしれない。」

「分かったわ、フォルト。そうしましょ。大丈夫よ、アリス。教皇様なら、きっといいお考えがあるはずよ。」

「うん、セティア、みんな、本当にありがとう!」

アリスはだいぶ勇気づけられたようだった。

一行は順調にダンケルクへの旅を続けることができた。

港湾都市ダンケルク

2日後、アリスたち一行はダンケルクへと到着した。

西門から市内に入ると、街はひっそりとしていた。

「なんだか、ルルド村の時のみたいだな……。ったく、嫌なことを思い出しちまうぜ。」

ジェラルドが顔をしかめて呟く。ルルド村の人々の成れの果ての姿が、未だに脳裏に焼き付いているのだろう。

街の家々には灯りが灯っている。人がいないわけではないようだ。

「ちょっと、寒いね……」

アリスが言うように、空気が異様な程にひんやりと冷えきっていた。

「とりあえず、教会のダンケルク支部に向かおう……。 !? まった! あれは……」

急に驚いた声を上げたフォルトの目の先にあるのは、街の一角にたたずむ黒い影。

亡霊のようなそれは、地面すれすれにフワリと宙を舞っていた。

「なに、あれ……!?」

思わず口にしたエリオルの言葉には、若干の恐怖が含まれていた。

その言葉に反応するかのように、影はすーっと街の奥の方へ進んでいった。

「嫌な予感がするわ……。追いかけるわよ!」

セティアが駆け出し、皆もそれにならう。

影の動きは遅いが、距離があった。黒い影は角を曲がり路地裏に消える。

「逃がさないわ……」

セティアがスピードを上げ一足早く路地に入る。

遅れてあとに続く一同が見たのは、立ち尽くすセティアと、路地の奥にいる一人の男性。そしてその男性から、まるで魂を吸いとるかのように、手をかざす黒い影。

それは一瞬のできごとで、男性の体からは次第に力が失われ、黒い影も徐々にその姿を霧散させていった。

影が跡形もなく消え去ったあと、残されたのは、気を失っているらしい男性とエリオル達。

「到着早々、妙なことに巻き込まれたわね……」

そう言うセティアたちの後ろ、街の中心の方がにわかに騒がしくなり、法衣を着た一団がこちらに向かってきた。

「こちらで間違いないのね……」

「はい! 報告にあった魔物に間違いありません……」

この街の教会騎士の一団のようだった。

指揮していた女性がこちらに気付き、名乗り出た。

「聖王教会ダンケルク支部の教区長ミュゼと申します。どうやら、みなさんは街に着いたばかりのようですね。今、この街は少々、込み入っていまして……」

そこまで言うと、ミュゼ教区長はフォルトの方を見て優しげに微笑みながら言った。

「そして、久しぶりね。フォルちゃん♪」

皆があっけに取られる中、静かにフォルトが言った。

「姉さん……、その呼び方はもうやめてくれないかな……」


改めて自己紹介をする一同。ミュゼはフォルトの実姉で、教会のダンケルク支部を任されているそうだ。

「セティア……、そこまで笑うことないだろう?」

「だって、あんた……『フォルちゃん』って……。ぷっ……くくっ……」

珍しく赤くなるフォルトに、お腹が痛いと言わんばかりに笑いをこらえるセティア。

ミュゼはアリスに話しかけていた。

「アリスさんでしたね。一度、トゥールの教皇様の元でお会いしていますね。」

にこやかに話を振るミュゼは、どこか人を和ませる雰囲気を持っていた。

「はい。幼いころに……。今はダンケルクにいらっしゃったのですね。」

アリスもミュゼのことは覚えているようだ。

「でも、まさかフォルトのお姉さんだったなんて……」

「もう……、フォルちゃんは、お姉ちゃんのことはお友だちにはあまり話してくれないのね……。昔はあんなに私の側を離れなかったのに……」

「何年前の話さ、姉さん……」

フォルトが反論した。それに、とフォルトは続ける。

「今は、この街の問題の解決が先決じゃないのかい? なにか困ったことになっているんだろう?」

「そうね。トゥール支部のお二人の力もぜひ借りたいくらいにね……」

「聞かせてくれますか?ミュゼ教区長。あたしも力を貸せるかもしれません。いいわよね、アリス? ヘルムートの件は後で必ず教皇様に連絡するから。」

笑いが収まったのか、真面目な顔をしたセティアが話に入ってきた。

話を振られたアリスも頷いて同意する。アリスも今ではだいぶ落ち着いたようだ。

セティアが言葉を続ける。

「まず、あの黒い影は何者ですか? ミュゼ教区長はご存知なのでしょう?」

相変わらず、セティアの言葉には遠慮というものがない。

「そうですね……。まず、あれは煉獄の使徒ではありません。」

ミュゼの答えにフォルトが怪訝そうな顔をする。

「確かに、使徒特有の瘴気は感じられなかった……。だけど、普通のモンスターの類いには思えなかったな。何かもっと禍々しいような……」

ミュゼが静かに語り出す。

「あれは太古の魔物。原初の世界より存在する悪魔の一種。そして今、街に現れているのは ”夢魔” 。三魔卿と呼ばれる悪魔のうちの一体よ。」

「悪魔……。太古の魔物か。それより、”原初の世界”というのは、確かアヌビスが言っていた……」

「驚いたわね……。”見守る者”の一柱に会っているのね。」

「姉さん。原初の世界というのは、現世とピュルガトワールが1つだった頃の世界なんだろう? 姉さんはその辺りのことについて、教皇様から聞かされているのかい?」

「…………」

ミュゼの顔が少しだけ険しくなった。

「フォルちゃんの頼みでも、これ以上は私の口からは語れないわ……。これは教会でも秘匿事項とされている内容よ。」

それでも、とミュゼは続ける。

「あなた達は、しかるべき時に、しかるべき相手から、このことについて語られるでしょうね。」

「それは、いったいどういうことでしょう……?」

アリスの問いに、ミュゼは悲しげに首を振って答えた。

「私から話せるのはここまでです、アリスさん……。」

重い沈黙があたりを包む。

その静寂を、一人の人物が破った。

「失礼します、教区長。ご報告いたします。」

「レイヴン……。何か分かったかしら?」

「はい。被害者の身体には特に異常は見当たりませんでした。既に夢魔の被害にあっている町民二人と同じく、まるで眠っているかのような状態です。ただ、最初の一人が未だ眠りから覚めずかなり衰弱していることからして、事態は静観できるものではなさそうです。」

「そう……。昏睡状態にある人たちをどうにかするのが先決ね。ただし、同時に市内の警備も強化する必要があるわ。」

そこで一息切ると、ミュゼは尋ねた。

「”夢魔” への対策について、何か情報は集まったかしら?」

レイヴンは薄い色をした1つの欠片を取り出した。

「街の薬師から預かったもので、”バク”の角だそうです。太古から、夢魔に生気を吸われた者への治療に使われていたようです。これ自体は既に効力は失われているようですが……。そしてバクは、永き時が経つと共に、夢魔と同じく忘れ去られた存在です。教会都市トゥールにて文献を調査しましたが、ヴェルト山脈のふもとでの確認事例が、現存する最新の目撃証言となっています。」

「バク……。夢魔と同じく忘れ去られた存在。今はそれにかけるしかなさそうね……」

そう言って何かを考えるように口を閉じるミュゼ。

そして、フォルト達のほうを向き、再び口を開いた。

「フォルちゃん……、いえ、トゥール支部所属教会騎士フォルト並びにセティア、そしてシノン村の皆さん。聖王教会ダンケルク支部より正式に依頼します。ヴェルト山脈に赴き、バクの探索、及び、角の採取の任務を引き受けてはもらえないでしょうか。」

ミュゼは柔らかく微笑みながら付け加えた。

「皆さんの、エルフの里やゲレの集落での活躍は聞いています。それを見込んで、力を貸してもらいたいのです。」

フォルトとセティアが頷き合い、アリスへと視線を向ける。アリスも、真剣な顔で1歩前へ出て、ミュゼに伝える。

「私たちでお役に立てるのであれば、喜んで。」

「ご協力感謝します、アリスさん。」

そして、副官のレイヴンに指示を出した。

「皆さんに、ヴェルト山脈までの地図と、バクに関する文献を。そののち、あなたは引き続き、夢魔出現の原因を探りなさい。」

「はっ、かしこまりました。」

レイヴンが資料を手に5人に説明を始めた。今後の方針を固めていく一同を見ながら、ミュゼの心はアイリーンの事を思い浮かべていた。

「(今回の事、教皇様はどのようにお考えなのかしら……。あるいは……)」

ミュゼの目はエリオルを見つめ、すぐに視線を反らした。

「(いえ、考えすぎかも知れないわね……)」

ヴェルト山脈

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv80)
1920045002600800
アリス
(Lv80)
1640012006002600
ジェラルド
(Lv80)
2100043002600500
セティア
(Lv80)
1690015006002000
フォルト
(Lv80)
18300290013001300
敵データ
  • キラーエイプ
  • ガルダストーム
  •   
  • 属性:無属性  HP:8,600

    攻撃力:4,800  防御力:400  魔法防御力:400

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ4,800
    噛みつき 2 単体に 無属性の物理ダメージ5,400 + 防御力300ダウン
      
  • 属性:無属性  HP:9,200

    攻撃力:5,200  防御力:500  魔法防御力:500

    移動力:6  攻撃射程:3

    技名 射程 効果
    通常攻撃 3 単体に 無属性の物理ダメージ5,200
    たつまき 5 単体に 風属性の物理ダメージ5,200 + 100%の確率でスタン + 吹き飛ばし5マス
    サイクロン ALL 敵全体に 風属性の魔法ダメージ4,000
      

一同は、教会のダンケルク支部にて、アイリーン宛てに「ロイとヘルムートの件」について手紙を出した。

そして、ミュゼの副官レイヴンの情報を頼りに、ダンケルクの東、ヴェルト山脈に足を向けた。

ヴェルト山脈は、大陸南東部に広がる大きな山脈である。ヴィニュマール霊山ほどの規模はないが、竜が眠る地であるなどの数々の伝承のある場所である。バクの住処があるという言い伝えもあながち間違いではないのであろう。

「霧がすごいな……。すでにヴェルト山脈のふもとには着いているはずだけど……。」

フォルトの声が空間に木霊する。この霧自体、何か霊的なものであるようだ。

「こんな状態じゃ、バクの住処も見つからないよ。フォルト、一度引き返した方がいいんじゃない?」

エリオルの言葉をフォルトは肯定した。

「そうだな。いったん最初の野営地まで戻ろう。そこでもう一度、策を練り直した方が良さそうだ。」

その時、霧を裂くように強い風が吹いた。

「きゃっ!?」

アリスの叫びは、周りには木霊しなかった。風が止んだ時、すでに霧は跡形もなく消え去っていたのだ。

「驚いたな……」

フォルトの呟きが指すのは、今の風でも、消え去った霧のことでもない。目の前にぽっかりと洞窟が口を開けていたのだ。

セティアが先を促した。

「まあ、こういう場合、偶然じゃないんでしょうね……」

バクの住処

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv80)
1920045002600800
アリス
(Lv80)
1640012006002600
ジェラルド
(Lv80)
2100043002600500
セティア
(Lv80)
1690015006002000
フォルト
(Lv80)
18300290013001300
敵データ
  • ブラックウィドゥ
  • レッドスライム
  • リザードマン
  •   
  • 属性:無属性  HP:8,200

    攻撃力:3,800  防御力:300  魔法防御力:300

    移動力:4  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ3,800
    ポイズンスタッブ 2 単体に 無属性の物理ダメージ3,800 + 100%の確率で毒
    スパイダーウェブ 5 単体に 無属性の物理ダメージ3,000 + 100%の確率でスタン
      
  • 属性:無属性  HP:7,400

    攻撃力:4,400  防御力:2,200  魔法防御力:0

    移動力:3  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 3 単体に 無属性の物理ダメージ4,400
    溶解液 5 円範囲(対象中心:3マス)に 無属性の物理ダメージ4,000 + 防御力400ダウン
    吸血 2 単体に 無属性の物理ダメージ4,400 + 与ダメージの100%分HP吸収
      
  • 属性:無属性  HP:12,000

    攻撃力:5,600  防御力:700  魔法防御力:400

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 3 単体に 無属性の物理ダメージ5,600
    落月襲破 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ5,000 + 攻撃力400ダウン
    雪月花斬 2 単体に 氷属性の物理ダメージ6,000 + 50%の確率で凍結 + 移動力ダウン
      

バクの住処と思われる洞窟は、不可思議に発光する壁と不気味な静寂に包まれていた。

「この壁は……、苔が光っているのか。洞窟全体が上位属性の霊的空間になっているようだ……」

「フォルト、呑気に考察している場合じゃないわよ。使徒の気配はなくても、モンスターはいるみたい……。」

セティアの言葉に、一同は武器を構え、戦闘に備えた。


モンスターを倒しながらしばらく進むと、洞窟内だというのに濃い霧に包まれた場所に出た。

「ここね……。」

「ああ、どうやら向こうも待っていたようだ……」

フォルトの言葉と共に、霧が晴れた。

象のような鼻、長い尾、虎や熊のような胴体。伝説上の生き物が、確かに目の前に佇んでいた。

Boss戦

バク

属性:無属性  HP:178,500

攻撃力:6,000  防御力:1,000  魔法防御力:1,000

移動力:4  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ6,000
ソウルシェイカー 7 単体に 魔法防御力400ダウン + 状態異常耐性ダウン
ナイトメア 10 円範囲(対象中心:5マス)に 闇属性の魔法ダメージ7,000 + 50%の確率で睡眠 + 20%の確率で悪霊
スリープソング ALL 敵全体に 20%の確率で睡眠
夢喰い 「睡眠」状態の敵全体に 無属性の物理ダメージ8,000 + 与ダメージの100%分HP吸収

「倒したか……」

フォルトが、武器を下ろさず警戒したまま様子を伺う。

「待って……! この子、何か語り掛けてきているわ!」

セティアが急に叫んだ。そのまま、横たわるバクに近づき、耳を傾ける。

「セティア! バクの言葉が分かるの?」

片手を上げてエリオルに「静かに」と伝えると、セティアはゆっくりとバクの言葉を聴き取っていった。

「つ、のを、持って、いくといい……。わたし、は、また眠りに、つく…………って言ってるわ。」

「ありがたい。それにどうやら本当に、洞窟が見つかったのも偶然じゃなさそうだ……」

フォルトがやれやれと首を振った。

セティアは、魔力の刃を作り出すと、そっとバクの角を削った。

セティアが離れると、バクは静かに一声いなないた。その途端、辺りは再び霧に包まれ、気が付くと皆、もと来た山道に立っているのであった。洞窟はすでに影も形も無くなっていた。

「昔から、こうして人間に力を貸していたのかもしれないな……」

感慨深げに言うフォルトの言葉には、バクへの感謝が滲んでいた。

「フォルト! 早く戻って、眠っている人たちを助けに行こう!」

エリオルの言葉に促され、フォルト達はダンケルクへと急いだ。

港湾都市ダンケルク

街に戻ってくるとすぐに、フォルトが違和感に気付いた。

「これは……、戦っているのか……?」

「フォルト、港の方よ!」

セティアの声に後を押されるように、一同は、ダンケルクの港に向かった。

港に着くと、一瞬、その広さに圧倒される。大陸一の港というだけのことはあるようだ。

戦闘の音は、港の中心、資材の置かれた広場から聞こえていた。

近づいてみると、すぐに状況が飲み込めた。

ミュゼを初めとする教会騎士が4人、明らかに劣勢に立たされているようである。相手は”夢魔”と呼ばれていたあの黒い影。ただし、その姿は5メートルを超し、外見も禍々しく変わっていた。まさに”悪魔”と呼ぶにふさわしいその姿に、皆、戦慄を覚える。

「姉さん!!!」

フォルトが叫ぶ。

「フォルちゃん……! 戻ってきたのね。」

ミュゼの顔に、少しだけ安堵の色が浮かぶ。

「ミュゼ教区長! あたしたちも加勢します!」

セティアの言葉と共に5人は広場へ駆け出した。

ミュゼは、すぐに顔を引き締めると、部下の教会騎士たちに指示を出した。

「全員、港の東側へ一時退避するわよ! 彼らと合流するわ。 術による威嚇で距離をとりつつ、夢魔を街から遠ざけなさい!」

「はっ!」

教会騎士たちが退却しながら魔法を放つ。夢魔はゆっくりと移動しながらこちらへ向かってきた。

「おいおい、何であんな化け物みたいにでかくなりやがったんだ?」

ジェラルドの疑問にはミュゼが答えた。

「夢魔に生気を吸われた人たちの衰弱が激しいの。一度、夢魔の烙印を押された者は徐々にエネルギーを奪われるわ。それによって夢魔の力は強まっていく。これ以上、被害を出さないためにも、ここで必ず倒さないと……」

フォルトたちも武器を手にする。

「みんな……、今回の件は皆の旅とは関係ない。生まれ育ったこの街を守りたいという、僕のわがままだ。それでも、どうか手をかしてくれないか?」

エリオル、アリス、ジェラルドが強く頷いて答える。

「セティア……」

フォルトがセティアに向き直り、尋ねる。

「煉獄の使徒の討伐でなくても、君は力を貸してくれるかい?」

セティアはフンと笑った。

「馬鹿にしないでくれるかしら、フォルト。あたしだって昔のままじゃないのよ。仲間のためなんてくすぐったいセリフは言いたくないけど、今のあたしはもう復讐のためだけに生きているんじゃない! あたしだって守りたいものはあるわ!!!」

セティアが魔力を展開する。

「変わったね……、セティア。皆のおかげかな……」

フォルトの呟きは、セティアの放った炎の轟音にかき消された。

「いくわよ、フォルト!!!」

「ああ、君ほど心強いパートナーはいないさ!」

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv80)
1920045002600800サウザンドブレード、白虎陣
アリス
(Lv80)
1640012006002600サイクロン、蒼龍陣
ジェラルド
(Lv80)
2100043002600500キラーザンバー、玄武陣
セティア
(Lv80)
1690015006002000ファイアストーム、ボルテックレーザー
フォルト
(Lv80)
18300290013001300アイシクルスラッシャー、聖槍レネ
ミュゼ
(Lv99)
17500380012003000シャイニングフレア、ルナティックストリーム
【セイクリッドプロテクション(味方全体に 全ての状態異常を回復 + 1ターンの間、全ての状態異常耐性を50%アップ)】
Boss戦

【"悪夢"司りし者】夢魔

属性:闇属性  HP:224,800

攻撃力:7,000  防御力:1,200  魔法防御力:1,200

移動力:6  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 闇属性の物理ダメージ7,000
スクウィールロアー 7 直線範囲(幅:5マス)に 無属性の物理ダメージ8,500 + 20%の確率で睡眠 + 20%の確率で暗闇
ナイトメア 10 円範囲(対象中心:5マス)に 闇属性の魔法ダメージ8,500 + 50%の確率で睡眠 + 20%の確率で悪霊
ブラックアウト ALL 敵全体に 50%の確率で睡眠
ダークナイト・コンフュージョン 闇属性 魔法:「睡眠」状態の敵全体に 「睡眠」を回復し、「混乱」状態にする。
召喚 「シルファーインプ」を2体召喚する。

シルファーインプ

属性:無属性  HP:17,700

攻撃力:4,000  防御力:600  魔法防御力:600

移動力:7  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ4,000
超音波 3 円範囲(自身中心:3マス)に 無属性の物理ダメージ4,000
催眠波動 5 単体に 無属性の物理ダメージ4,000 + 50%の確率で睡眠
ストーム 10 円範囲(対象中心:5マス)に 風属性の魔法ダメージ3,000

夢魔の身体がゆらゆらと揺らめき、次第に力を失っていく。残されたわずかな黒いもやが、球のように形を保ちながら街のはるか南へと吸い込まれるように移動していった。

「これが、悪魔……"夢魔"の力……」

ミュゼが肩で息をする。今の戦いでだいぶ疲弊したようであった。

「あなたたちのおかげで街にも被害が出ずに済みました。本当にありがとう。感謝します。」

「いえ、ミュゼ教区長の術にも助けられました。邪な力を祓う術、アイリーン義母様の元でも見たことのないようなものでしたね。」

アリスの問いに、ミュゼは少し戸惑ったような調子で答えた。

「ええ……、私は少し変わった力を宿しているらしくてね……。少々、風変わりな術が使えるの。」

フォルトが話に割り込んだ。

「それより、姉さん! あの黒いもやが向かった方向、街の南には何があるんだい?」

「そうね、あの方角は……」

「失礼します、教区長。それは、私からお答えしましょう。」

聞き覚えのある声が響いた。ミュゼの副官レイヴンが駆けつけていた。

「レイヴン……、戻ったのね。何か手掛かりは掴めたのかしら?」

「はい。まず、先ほどフォルトさんの言った方角、あちらにはご存知の通り "ザントライユ城" があります。」

そこで、フォルト達のほうを向き、言葉を付け足した。

「太古の時代より、治める者なき国の跡として城だけが残されています。様々な逸話の残る城ですが、長いこと誰も足を踏み入れることはありませんでした。」

「では、まさか今回の事件は……」

「はい。何者かがザントライユ城に侵入した形跡がありました。そこで三魔卿の一体、夢魔を復活させたと思われます。」

「で、でも、悪魔なんて、そんな簡単に蘇らせることができるんですか? それになぜ、そのお城なんでしょう?」

「そうですね、アリスさんの疑問も最もです。ザントライユ城には、ある古代遺物があるのです。」

レイヴンのその答えを聞いて、ミュゼがはっとして口を開いた。

「なるほど……。 "映しの神鏡" ね……」

「その通りです。」

レイヴンが続ける。

「映しの神鏡の前に、夢魔を封じた偶像が置かれていました。神鏡は映したものの本質を具現化します。何者かが夢魔の偶像を意図的に置き、具現化された夢魔が街を襲ったと考えられます。まずは報告をせねばと思い戻ってまいりましたが、もう一度城に赴いて偶像を回収し、ザントライユ城を教会の管理下に置くべきかと存じます。」

「分かったわ。私が直々に行きましょう。レイヴン、あなたは、彼らの持ち帰ったバクの角で、昏睡した人たちを目覚めさせてあげなさい。そして、私が戻るまでこの街の警備を命じます。」

「はっ、仰せのままに。」

「ミュゼ教区長。私たちも同行します!」

アリスがミュゼに申し出た。

「気持ちは嬉しいわ、アリスさん。でも、今回の件にこれ以上、あなた達を巻き込むわけには……。それに、今、あなたは何か事情を抱えているのでしょう?」

「だからこそです。ここで手を引いたら、父に顔向けできませんから。」

アリスは微笑みながらも、力強く言った。

「あなたは、まさしくロイ殿の子ですね。戦役時に一度だけお会いしているけれど、よく似ています。」

そう言うと、ミュゼは南の方角を見据えた。

「ありがとう、みなさん……。行きましょう。この街を守るために。」

ザントライユ城

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv80)
1920045002600800
アリス
(Lv80)
1640012006002600
ジェラルド
(Lv80)
2100043002600500
セティア
(Lv80)
1690015006002000
フォルト
(Lv80)
18300290013001300
ミュゼ
(Lv99)
17500380012003000シャイニングフレア、ルナティックストリーム
【セイクリッドプロテクション(味方全体に 全ての状態異常を回復 + 1ターンの間、全ての状態異常耐性を50%アップ)】
敵データ
  • オールドアイ
  • ドレッドナイト
  • ブロンズゴーレム
  •   
  • 属性:無属性  HP:9,000

    攻撃力:5,000  防御力:200  魔法防御力:1,000

    移動力:5  攻撃射程:7

    技名 射程 効果
    通常攻撃 7 単体に 無属性の物理ダメージ5,000
    魔眼 7 単体に 100%の確率で混乱
    バニッシュ 10 時属性 魔法:単体に 100%の確率で消滅
      
  • 属性:無属性  HP:15,200

    攻撃力:6,000  防御力:1,200  魔法防御力:400

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ6,000
    ボーンダート 7 単体に 無属性の物理ダメージ7,000
    ※一番遠くの敵を狙う
    突進 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ6,000 + 対象方向に7マス移動
    カーズブレード 5 円範囲(自身中心:5マス)に 闇属性の物理ダメージ6,000 + 20%の確率で悪霊
      
  • 属性:無属性  HP:60,000

    攻撃力:6,500  防御力:1,200  魔法防御力:600

    移動力:3  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ6,500
    ブロンズブロー 2 円範囲(対象中心:3マス)に 無属性の物理ダメージ6,500 + 吹き飛ばし5マス
    パワークラッシュ 2 単体に 無属性の物理ダメージ9,000
      

「気をつけてください。古い城の跡だけあってモンスターが徘徊しています。」

ミュゼの言葉に気を引き締める一同。

「姉さん、映しの神鏡というのはどこにあるんだい?」

「城の天守、"神鏡の間"と呼ばれる部屋に置かれているわ。まずは上を目指しましょう。」

その時、急に城内の空間が歪み始めた。

「なに、これ!?」「これは!?」

驚くセティアと、フォルトに対し、ミュゼは落ち着いていた。

「遅かったわね……。」

ミュゼたち全員を包み、空間がねじ曲がった。

幻影回廊

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv80)
1920045002600800
アリス
(Lv80)
1640012006002600
ジェラルド
(Lv80)
2100043002600500
セティア
(Lv80)
1690015006002000
フォルト
(Lv80)
18300290013001300
ミュゼ
(Lv99)
17500380012003000シャイニングフレア、ルナティックストリーム
【セイクリッドプロテクション(味方全体に 全ての状態異常を回復 + 1ターンの間、全ての状態異常耐性を50%アップ)】
敵データ
  • スペクター
  • グレムリン
  • セラフ
  •   
  • 属性:無属性  HP:7,800

    攻撃力:5,200  防御力:9,000  魔法防御力:0

    移動力:6  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ5,200
    ファントムペイン 7 直線範囲(幅:5マス)に 幻属性の物理ダメージ5,000 + 20%の確率で暗闇 + 防御力400ダウン
    シャドウバースト ALL 敵全体に 闇属性の魔法ダメージ4,500
      
  • 属性:闇属性  HP:10,000

    攻撃力:5,500  防御力:400  魔法防御力:800

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ5,500
    ダークネス 10 単体に 闇属性の魔法ダメージ5,500
    イルストーム ALL 単全体に 闇属性の物理ダメージ3,500 + 20%の確率で毒
      
  • 属性:光属性  HP:13,200

    攻撃力:5,800  防御力:800  魔法防御力:500

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 光属性の物理ダメージ5,800
    戦乙女の詩 味方全体に HP5,000回復 + 攻撃力400アップ
    三段切り 2 単体に 無属性の物理ダメージ8,000
    ホーリークロス 7 円範囲(対象中心:3マス)に 光属性の物理ダメージ5,000 + 防御力・魔法防御力400ダウン
      

「ここは……、回廊……? ザントライユ城のどこかへ飛ばされたのか……?」

「違うわ、フォルちゃん。おそらくこれは、悪魔の力の具現化と共に作り出された空間よ。」

「悪魔……? 夢魔はダンケルクの街で完全に倒したんじゃ……?」

エリオルの疑問にミュゼは首を振る。

「残念ながら、事件の犯人が新たな悪魔を復活させたようね。」

「ということは犯人は……」

「ええ。神鏡の間に先回りしたみたい。」

セティアが尋ねる。

「ミュゼ教区長。今回の悪魔に心当たりはありますか?

「幻の属性を持つ空間……。幻影を司る【三魔卿】の一体、"幻魔"でしょうね。」

「幻を操る悪魔か……。この回廊を抜けるのも一苦労しそうだ……。」

そう言いながらも、フォルトは力強く槍を構えた。


「ようやくお出ましか!」

ジェラルドが待ちくたびれたと言わんばかりに戦斧を回廊の奥の悪魔に向ける。

「気を付けて! 力は、ダンケルクで戦った夢魔と同等かそれ以上よ!」

ミュゼの言葉に頷きながらも、フォルトは幻魔を真っ直ぐ見据えて言った。

「こんな奴を街に放つわけにはいかない! いち早く犯人を捕らえるためにも速攻で狩らせてもらう!」

セティアが苦笑する。

「自分の街のこととなると人が変わるんだから……。人のこと戦闘狂呼ばわりしたのは誰だったかしら。」

幻影を司る悪魔との戦いが始まった。

Boss戦

三魔卿【"幻影"司りし者】幻魔

属性:幻属性  HP:224,800

攻撃力:7,000  防御力:1,200  魔法防御力:1,200

移動力:6  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 幻属性の物理ダメージ7,000
ミラージュイリュージョン ALL 敵全体に 幻属性の魔法ダメージ6,000 + 20%の確率で混乱 + 20%の確率で暗闇
ミスティックヴェール ALL 敵全体に 幻属性の魔法ダメージ6,000 + 20%の確率で睡眠 + 魔法防御力400ダウン
ヒーリングミスト 幻属性 魔法:自身に HP10,000回復
※ディレイ短
ブリンク 幻属性 魔法:自身に 2ターンの間、回避率50%アップ
※ディレイ短

ザントライユ城(神鏡の間)

辺りの景色がもとに戻った。

「回廊から抜け出せたのか……」

一同はザントライユ城の天守にまで辿り着いていた。

「あっ……あれが、もしかして!」

アリスが叫び、指差した方向。大きく立派な鏡と、装飾が施された台座が据えてあった。

台座には2体の偶像。紫色の1体は輝きを失っていた。その隣、灰色の偶像が、次第にその輝きを失っていく。具現化された夢魔と幻魔はともに力を失ったようだ。

「待って……。そこの人、隠れていても無駄よ! 姿を見せなさい!」

ミュゼの視線の先、鏡の横の柱の陰からローブに仮面をつけた人物が現れた。

ニヤリ、と仮面の下で口元が笑った。仮面の人物は懐から素早く黄色の偶像を取り出すと、台座に置いた。そして、何かの呪文を唱える。

「しまった……、やめさせないと!」

しかし、遅かった。黄色の偶像が光りだし、その光を映した神鏡から巨大な獣のような悪魔が現れた。

「【三魔卿】の最後の一体……、"狂妖"司る者「妖魔」……」

ミュゼが悔しそうに呟く。

仮面の人物が一歩下がり、代わりに妖魔がこちらへ向かってくる。

「これ以上、何をしようと無駄だ! この悪魔を倒し次第、あなたには教会の取り調べを受けてもらう。」

正義感に満ちたフォルトの言葉が響き渡り、妖魔との戦いが始まった。

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv80)
1920045002600800
アリス
(Lv80)
1640012006002600
ジェラルド
(Lv80)
2100043002600500
セティア
(Lv80)
1690015006002000
フォルト
(Lv80)
18300290013001300
ミュゼ
(Lv99)
17500380012003000シャイニングフレア、ルナティックストリーム
【セイクリッドプロテクション(味方全体に 全ての状態異常を回復 + 1ターンの間、全ての状態異常耐性を50%アップ)】
Boss戦

【"狂妖"司りし者】妖魔

属性:無属性  HP:224,800

攻撃力:7,000  防御力:1,200  魔法防御力:1,200

移動力:6  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ7,000
吸血 2 単体に 無属性の物理ダメージ12,000 + 与ダメージの100%分HP吸収
クロスリッパー 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ9,000 + 20%の確率で即死 + 対象方向に7マス移動
グラトニースウォーム 2 単体に 無属性の物理ダメージ15,000 + 攻撃力・防御力・魔法防御力800ダウン
毒霧 ALL 敵全体に 50%の確率で毒
アシッドレイン ALL 敵全体に 無属性の物理ダメージ6,000 + 20%の確率で毒 + 防御力400ダウン
エナジーサック ALL 敵全体に 無属性の魔法ダメージ6,000 + 与ダメージの50%分HP吸収

フォルトの槍がローブの人物の仮面をはじき飛ばす。顕わになった素顔を見てそこにいた全員が驚く。

「あなたは……」

「レイヴン!? こんなところで何をしているの! 夢魔に眠らされた街の人たちは? それよりも今回の事件、全てあなたが黒幕だったというの!?」

「ふふっ。焦らなくとも全て答えますよ。まず、夢魔の手にかかった街の人々は全員、目を覚ましました。命に別状はありません。そして、今回の黒幕は私ではありません。私はとある人物に依頼を受け、秘密裏に行動をしていただけです……聖王教会を欺いてね。そして、最大の目的はあなたをここまでおびきよせることです。」

そう言うと、レイヴンは再び何か唱え始めた。

思わず神鏡を見る一同。しかし、そこに映っているのはミュゼの姿のみ。その意味を理解する間もなく、神鏡が光りだした。

次の瞬間、ミュゼが胸を押さえてうずくまる。そして、鏡から姿を現す剣を持った男性の姿。

「その姿、まさか……」

ミュゼが苦しみながらもはっきりと言い放った。

「聖王ユージーン様!」

「!?」

ミュゼ以外の5人は驚きに目を丸くした。

と、同時にレイヴンが笑いだす。

「はははっ。あの方の言った通りですね。これでいい報告ができそうです。」

そう言うと、レイヴンは背後の窓から立ち去ろうとする。

「待ちなさい!!!」

セティアが叫ぶ。

だが、一同の前に、鏡により具現化されたユージーンの幻が立ちはだかる。

そのすきにレイヴンは姿を消してしまった。

「ほ、本物の聖王様なの……?」

エリオルは自分たちに剣を向ける伝説の英雄に怯んだ。

「落ち着くんだ、エリオル。姿は聖王様でも、鏡が具現化させた幻に過ぎない。ただ、なぜ姉さんの姿を映しの神鏡が……」

フォルトでさえ状況の整理が追い付かないようだ。

「冗談じゃないわ。聖王様の強さは生半可なものじゃないわよ。いくら幻影とはいえ……」

「それでも、ここで引くわけにはいかない。何とか無力化できれば……」

幻影のユージーンの身体に霊力が集まってくる。その手が剣を振るい、すさまじい霊圧が皆を襲った。

Boss戦

ユージーン・アニマ

属性:無属性  HP:999,900

攻撃力:10,000  防御力:2,000  魔法防御力:1,500

移動力:7  攻撃射程:2

技名 射程 効果
【セイントアウラ】 ※特殊能力
自身の受ける属性ダメージ(無属性以外/物理・魔法を問わない)を半減する。
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ10,000
オーロラブレード
―極光の聖剣―
7 単体に 無属性の物理ダメージ25,000
次元断層 7 直線範囲(幅:3マス)に 時属性の物理ダメージ12,000 + 50%の確率で消滅
エターナルストライク ALL 敵全体に 時属性の物理ダメージ15,000 + 20%の確率で消滅

ユージーン幻影の圧倒的な力の前に、一同はひざをつく。そこに無慈悲にも幾重にも重ねらた霊圧が波となって襲いかかる。

「!!!!!」

ガキィイーン!!!!

「…………?  フォルト……、あんた!」

セティアが声をあげる。

フォルトが皆を守るように立ちふさがりながら障壁を展開している。その全身は霊圧による傷で見るも耐えない姿になっていた。

「セティア……、姉さんと、みんなをつれて逃げるんだ……」

「馬鹿言わないで! そんなことできるわけないでしょ!?」

「セティア!!!」

フォルトが痛みに震えながら、顔に苦痛を浮かべながら強い口調で言った。

「頼む……。僕の大切な人たちを死なせたくないんだ……」

「あんた……」

「君以上に頼りになるパートナーはいない。これまでも、これからもね。」

決断を迫られるセティアを救ったのは、神鏡の間に響き渡る神々しい声。

「フォルト……あなたの覚悟は立派です。ですが、最後まであきらめてはいけませんよ。」

「守護せよ……『イノセント・サンクチュアリ』!!!」

何者かの声と共に神聖な光が皆を包む。

「その声……!この術は……!?」

ミュゼが驚き、声のした方を振り返る。

同じく振り返ったアリスは自分の目を疑った。そこに居たのは……

「アイリーン義母さま!?」

「よく頑張りましたね、アリス。そして皆さんも。」

「義母さま……、なぜここに……?」

「あなたからの手紙を読みました。そして同時に、あなた達の居るダンケルクに不穏な動きがあることを知り、駆け付けたのです。」

「…………助かりました、義母さま……」

「感動の再会にはまだ早いようですよ、アリス。下がっていてください。」

ユージーンの影が、再び霊圧を放つ。しかし、アイリーンの術式に守られたアリス達に、その攻撃は届かない。

「聖王ユージーン様の "影" よ。その力の源を絶ち、守るべき者たちへ刃を向ける暴挙を禁じます。」

「 『アンテリュプスィオン(虚影の断絶)』 」

キィィーーーーーン!!!!!!

耳をつんざく音が神鏡の間に響く。ユージーンの影が揺らめき、その姿が徐々に薄れていく。映しの神鏡はもう何も映さず、鏡面を曇らせていた。

そして、ミュゼが崩れ落ちた。

「姉さん……!!!」

「鏡とのリンクを絶ち切りました。もう大丈夫でしょう。」

アイリーンがミュゼを優しく助け起こす。

「教皇様、申し訳ございません。お手を煩わせました。しかし、なぜ私から聖王様の影が……?」

「それは、わかりません。レイヴンが何かを知っているのでしょうが、取り逃がしましたね。トゥールからも騎士を手配します。捕え次第、知っていることを答えさせましょう。」

「それよりも、」とアイリーンは皆を見回して言った。

「まずは街に戻って治療をするのが先です。太古の悪魔を相手に、そして聖王様の影を相手に、本当によく戦いました。あなた方の努力がダンケルクを救ったのです。」

アイリーンの労いの言葉を合図に、一同はダンケルクへと帰還した。

港湾都市ダンケルク

街では、夢魔によって眠らされた人たちが目を覚ましていた。レイヴンの言っていたことは本当だったらしい。

ただ、当のレイヴンは未だ見つかっていない。今回の事件の真相を握っているだけに、早急な捕縛が求められた。レイヴンの捜索はトゥール支部の教会騎士たちに託され、回復したミュゼを初めとするダンケルク支部の教会騎士たちは、街の治安維持と復興に努めた。

また、ザントライユ城は教会の管理下に置かれ、二度とこのような事件が起きぬよう厳重に監視されることとなった。

ダンケルクの教会では、アイリーンとアリス達がロイのことについて話し合っていた。

「そうですか……そんなことが……」

アイリーンはアリスから火の山での事情を聞いた。

「さぞ、辛かったことでしょう、アリス。ロイが生きていてくれたなら、私とて、これほどに嬉しいことはありません。しかし、フォルトの言うように、ヘルムートとロイとの意識の混濁が奇妙ですね。"憑依"という現象は私も専門外ですが、ありえない話ではないかもしれません。」

そこで、アイリーンは少し考え込むと、アリスに対して言った。

「アリス、あなた達はこのまま聖域都市クレテイユを目指しなさい。そこで、世界樹ユグドラシルの力を借りるのです。世界樹は、心の底から真実を求める者に、その真実を語ってくれます。」

「でも義母さま……、私たちに、世界樹はお言葉をくださるのでしょうか……」

「あなた達は成長しました。教会都市を出てからのあなた達の活躍はすべて耳にしましたよ。本当に立派になりましたね。それにあなた達は、"見守る者"が一柱、アヌビスに会っているそうですね。彼から何か意味ありげなことを言われたのでしょう? あなた達には、その答えを聞くだけの資格があります。」

「義母さま……。分かりました。私は、私たちの歩いてきた道、見てきた多くのもの、そして経験したことを信じてみます。そして必ず、世界樹から真実を聞かせてもらいます。」

「アリス、ロイがもし今も暗闇に囚われているのだとしたら、それを救うことができるのは他のだれでもありません。あなたです。私の友を、あなたの父を救ってあげてください。」

アイリーンはそう言うと、優しくアリスを抱きしめた。アリスは、久しく感じていなかった義母の温もりに触れ、思わず涙を流しそうになったが、それをぐっとこらえた。願わくばこの温もりが永遠にあればと思いつつ、名残惜しくも思いながら、アリスはアイリーンから一歩離れて決意に満ちた目でひとこと言った。

「行ってきます、義母さま。」

強い絆で結ばれた二人の間には、それ以上の言葉は不要だった。

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