第1部 第3章

alice

サントラル平原

一面に広がる戦いの跡。倒れ伏す者たちは、ある者は人間であり、ある者は人ならざる者たちであった。死んでいった者たちはもはや何も語ることなく、ただその凄惨な光景の一部と化していた。

煉獄の使徒と現世の者たちとの戦いは、双方に甚大な被害をもたらした。

“煉獄の王”と呼ばれるガラテアをはじめ、煉獄の使徒の多くは討伐され、残った者たちも戦意を失い各地に散っていった。

片や、現世の者たちも無事では済まされなかった。兵として戦った者たちはもちろん、中央都市ロレーヌでは、敵の侵攻を許し、民間人にも多くの被害が出た。また、大陸各地で、暴走した使徒との争いに村や街が巻き込まれた。

後に “聖王戦役” と呼ばれる争いは、ここに終結した。


平原の片隅、人間の陣営の拠点にて、物憂げにたたずむ一人の男性の姿があった。男は難しい顔をしながら、ひとり何かを考えているようであった。

「 (あとは “ゲート” を閉じるだけか。 まあ、こちらのほうが骨が折れるのだがな……。) (ユグドラシルの言うことが本当であれば、二度とこの地を見ることもかなわぬか。名残惜しくないといえば噓になるが、だがそれでも……) 」

そこで男は、うつむいていた顔を上げて空を仰いだ。

「これが、私が選んだ答えだ。」

男の顔には、もはや「迷い」はなく、そこにあるのはただ「決意」だけであった。

不意に、男に声をかける者があった。

「ユージーン様、こちらにいらっしゃったのですね。」

振り向くと長い銀髪の少女が立っていた。

ユージーンは静かに尋ねた。

「我らの陣の被害はどうだ?」

悲痛な面持ちで少女は答えた。

「兵の半数近くが命を落としました……。負傷者の数も多く、救護が間に合っておりません。魔族、エルフの陣営も、同じような状況です。」

「そうか……。」

しばし考えたのち、ユージーンは続けた。

「負傷者を市内に運ぶのが急務だ。同時に、残された兵を再編して、ロレーヌを中心に陣を敷く。生き残った使徒がまだ多く居る以上、不測の事態に備える必要がある。大陸各地にも伝令を出そう。各都市の被害がどれほどのものであるか、早急に確かめなければならん。」

「かしこまりました。」

「お前には苦労をかけるな。すまないがよろしく頼む。」

少女は少し顔を赤らめて答えた。

「いえ、私などがユージーン様のお役に立てるのならば。」

そして、少しためらうように少女が尋ねる。

「ですが、ユージーン様、ひとつだけ教えてください。」

「何だ?」

「なぜ、ガラテアを “封印” したのですか? ユージーン様のお力があれば、かの存在を “消滅” させることも可能だったはずです。」

真っ直ぐな瞳で問いかけてくる少女に対し、ユージーンはやれやれといった顔をする。

「それは私を買いかぶりすぎだな。単に、私では奴を封印するので精一杯だっただけのことだ。」

「そう、ですか………」

少女は不満そうな顔をしながらもそれ以上追及はしなかった。

「では、私はそろそろ行くぞ。残った兵たちを労ってやらねばな。」

そのまま立ち去ろうとするユージーン。

「……………………」

一拍おいたのちに後ろから声がかかる。

「っ!………ユージーン様!」

少女は、先ほどの凛とした雰囲気が薄れ、何かを恐れるような目でユージーンを見つめていた。

「どうした、そんな悲しそうな顔をして……」

「いえ、すみません………。ただ……」

いったん言葉を切り、少し迷ってから続けた。

「ユージーン様がどこか遠くへ行ってしまうような、そんな気がして………」

ほんの一瞬、ユージーンの顔に驚きの色が浮かぶ。だが、すぐに優しい声で少女に言いきかせた。

「大丈夫だ。私はどこにも行ったりしない。せっかくこの世界を、お前と共に守れたのだからな。」

「ユージーン様……」

「では、またな。」

「……………………」

ユージーンはそのまま振り返ることなく歩き出し、少女もまた、声をかけることはなかった。

少女の姿が見えないところまで来ると、ユージーンは立ち止まって陣を振り返った。

「まったく、聡い子だ……。」

ひとり呟くユージーン。

「これが、私がお前につく最初で最後の噓になるな……。心は痛むが、真実を知れば、お前は必ず私を止めるだろう。だが、やらねばならないのだ。これからはお前たちの時代だ。信じているぞ。」

そして、前へと歩き出しながら静かにつぶやいた。

「さらばだ、アイリーン。」

月の浜辺

「…リ……、………オル!」

誰かが必死に叫んでいる。薄っすらと目を開けると、見知った顔が自分をのぞき込んでいた。

「良かった……エリオル! 目を覚ましたんだね……」

アリスの顔に安堵の色が広がる。

エリオルのほうは、まだ混乱していた。

「あれ、ここは……? 僕はどうして……」

ゆっくりと、落ち着かせるように、フォルトが話しかけてくる。

「煉獄の使徒の影響で、一時的に気を失っていたのさ。元凶は倒したから、もう心配いらないよ。」

まだ、ぼーっとする頭で、何かを思い出そうとするエリオル。

「なんだか、不思議な夢を見ていた気がする……」

「夢だなんて、呑気なものね…………まったく、心配かけてくれちゃって! アリスがあんたのこと、どれだけ心配したと思ってるのよ。」

セティアの相変わらずの対応に、苦笑いする一同。

フォルトが言った。

「さて、夜も明けてしまったことだし、このままモーゼル帝国に向かおう。エリオル、歩けそうかい?」

モーゼル帝国郊外

「この道を真っ直ぐ行けば、モーゼル帝国の城下町に着くわ。」

セティアの指し示す先には、城のものであろう尖塔がいくつか見えた。

ジェラルドが尋ねる。

「そもそも、モーゼル帝国ってどんな国なんだ?」

「大陸北西部の独立国家よ。北には大氷原が広がっているから、生活するには厳しい場所だけど、初代皇帝がドルラン鉱山での鉄鉱石の採掘に成功してから、その富を元に発展したみたいね。今は、第七代皇帝、アドルフ帝が治めているわ。」

セティアが答え、補足するようにフォルトが後を続けた。

「もともとは閉鎖的な国であったようだけど、現在のアドルフ帝になってからは、教会の教えもだいぶ国内に浸透するようになったみたいだね。」

その時、前方から鎧の音と共に、兵士が数人こちらに向かってやってくるのが見えた。

エリオルが不思議そうに言う。

「何だろう? 街道の巡回か何か、かな?」

先方もこちらの姿を見とめたのだろう、慌ただしくこちらに駆け寄ってくる。そのまま兵士の一人が荒々しく尋ねてきた。

「お前たち、旅の者か? この国に何の用で訪れた?」

代表して答えようとしたフォルトが一歩前に進み出る。すると、フォルトの服の紋章に気付いた兵士が声を荒げた。

「貴様ら、聖王教会の者だな。ならば大人しくついてきてもらおうか。」

有無を言わせぬ様子で、あっという間に兵士たちに取り囲まれるのであった。

モーゼル帝国 地下牢

「それで、何でこうなっているのかしらね?」

「いや、まさかいきなり牢に入れられるとはね……」

苛立ちをぶつけるセティアに、落ち着いて返すフォルト。

ジェラルドが牢の外の兵士に向かって叫ぶ。

「おい、俺たちが何をしたって言うんだよ!」

「うるさい!おとなしくしていろ!」

番兵から乱暴な声が帰ってきた。

アリスが心配そうにつぶやく。

「私たち、どうなっちゃうんだろう……」

エリオルが安心させようとアリスに話しかける。

「大丈夫だよ、アリス。何かあったら、今度は僕がアリスを助けるから。あの浜辺で、アリスは僕を必死に救ってくれたからね。」

セティアもアリスのほうを見て、こう言った。

「そうよ。あんたは義理とはいえ、アイリーン様の娘でしょう? 堂々としていればいいのよ。こんな狼藉、許されるわけがないわ!」

「そうだな、聖王教会とモーゼル帝国は、現在は良好な関係を築いていたはずだ。教会の関係者だと分かった途端に捕らえられる理由が分からない……」

さすがのフォルトもこの事態には疑問を感じているらしい。

しばしの間、皆、黙って成り行きを見守っていたが、やがて兵士が降りてきて一同に告げた。

「お前たち、ついてこい!」

闘技場

大きな広場のような場所。そして、それを取り囲む壁と多くの観衆。「闘技場」………そう呼ばれる場所だということを彼らは後で知った。

先ほどの兵士が告げる。

「お前たちには、ここで魔物と戦ってもらう。まあ、一種の見せ物というわけだ。」

そう言った兵士の顔は意地悪く歪んでいた。

セティアが、我慢ならないといった面持ちで兵士を怒鳴りつけた。

「馬鹿なこと言わないで! 私たちは聖王教会の関係者よ!」

それに負けぬ声で、兵士が唸るように声をあげた。

「だからこそだ! 帝国に仇なす聖王教会の信徒にはお似合いだろう。」

それだけ言うと兵士は去って行き、後にはエリオル達と周囲を埋め尽くす観衆だけが残された。

「おいおい、どういうことだよ。何かの間違いじゃないのか!?」

ジェラルドの言葉も耳に入らないのか、フォルトは一人何かを考えているようであった。セティアのほうは怒りで我を忘れている。
エリオルはアリスを後ろに庇いながら闘技場の向かいの門を見つめる。低い獣の唸り声のようなものが、そこから漏れ聞こえていた。

エリオルが前を見たまま呟く。

「大丈夫さ、アリス。 僕が君を守るから。」

エリオルの瞳に不思議な輝きがともったことに気づくものは誰一人としていなかった。

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv25)
65001700800200【極光の聖剣】
敵単体に 無属性の物理ダメージ5,000
自身に2ターンの間、毒+マヒ+悪霊
※この戦闘でのみ使用可
アリス
(Lv25)
5400500200800
ジェラルド
(Lv25)
72001500800100
セティア
(Lv25)
5600600200600
フォルト
(Lv25)
62001100400400
敵データ
  • マンティコア
  • 属性:土属性  HP:26,500

    攻撃力:2,400  防御力:400  魔法防御力:400

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,400
    猛毒針 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,800 + 50%の確率で毒
    突進 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ2,000 + 対象方向へ移動7マス
    クエイクスフィア 10 円範囲(対象中心:5マス)に 土属性の魔法ダメージ2,000 + 20%の確率でスタン

「どういうことよ、あんた……。その剣さばき……まるで別人じゃない…………」

驚きを隠せないといったふうなセティアに対し、エリオルは不思議と落ち着いていた。

「分からないんだ……。魔物を前にしたら、なんだか力がみなぎってきて………だけど、もう……」

そのままふらっと倒れそうになるエリオル。

「おいおい、しっかりしろよ!」

慌ててジェラルドが助け起こす。アリスも心配そうに駆け寄ってきた。

フォルトは探るような目でエリオルを見つめていたが、すぐに皆に指示を出した。

「魔物が出てきたところから外へ抜けられそうだ。ジェラルド、エリオルを頼む! みんな、ひとまずここから逃げよう。」

ボーヌ村

闘技場を抜け出した一同は、城下町へと躍り出た。幸いなことに、闘技場は街のはずれに位置していたため、そのまま街道へと逃げることができた。

フォルトを先頭に、意識が朦朧としているエリオルを抱えたジェラルドが続き、その後ろをアリスとセティアがついていった。追っ手は来ないようであった。

じきに村が見えてきた。モーゼル帝国南端の村「ボーヌ村」である。

「ひとまず、エリオルを休ませよう。」

5人は宿屋に入り、部屋のベッドにエリオルを寝かせると、フォルトが言った。

「セティア、君とアリスとジェラルドで、宿屋の主人からモーゼル帝国の現状について、何か情報を得てきてくれないか。」

「分かったわ。」

セティアがうなずき、ジェラルドとアリスも後に続こうとしたが、すぐにアリスが振り向いて言った。

「あの……、やっぱり私は、その……エリオルの側に居てもいいかな?」

フォルトは珍しく強い口調でアリスに言った。

「悪いけど、僕とエリオルの2人にしてくれないかな。大丈夫、魔力による治療を行うだけだから。」

「そ、そう……。分かった。私も外に行っているね。」

アリスは名残惜しそうに何度か振り返ったが、セティアとジェラルドに連れられて部屋の外に出て行った。

部屋に残されたのは、気を失ったままのエリオルと、真剣な顔をしたフォルトのみである。

「さて……………。何らかの術式による干渉も見られない。本人も自覚しないままの力の顕現か……。ただし、反動はあるようだ。」

一人呟き、部屋のドアからそっと外を伺う。

宿屋の1階から主人とセティアたちの話す声が聞こえてくる。

「城下でいったい何が……」

「王様はまるで人が変わったみたいでねぇ…………あんた達、旅人かい? よくこんな時期にこの国にきたもんだなぁ…………」

「王様に何かあったのですか?……」

「いや、これはあまり大きな声では言えないんだが……」

すぐに部屋に戻ったフォルトは、魔力を展開させ、エリオルに癒しの術式をかけた。

しばらくすると、エリオルがゆっくりと目を開いた。

「ここは……?」

不思議そうに辺りを見回すエリオルにフォルトが優しく言った。

「モーゼル帝国の宿屋の一室さ。みんなもすぐに戻ってくるよ。」

まだ意識がはっきりとしていないのか、エリオルの反応は鈍かったが、構わずフォルトは続けた。

「聞かせてくれるかい? 先ほどのこと、君はどこまで覚えている?」

強い口調で尋ねてくるフォルトに戸惑いながら、エリオルは答えた。

「確か…………地下牢から兵士に連れ出されて、闘技場で巨大な魔物を前にして…………アリスを守ろうと思って…………それから……」

必死に何かを思い出そうとしたのち、エリオルはうなだれて呟いた。

「駄目だ……、思い出せない……。」

対するフォルトは淡々と落ち着いて語りかける。

「覚えていない、か…………。君はあの闘技場の場で、あまりにも冴えわたる剣技と身体能力を見せた…………今までの君からは想像もできないようなね。」

エリオルは話を聞いても実感が湧かないようであったが、フォルトはそのまま語り続けた。

「その力は、あまり多用しないほうがいい…………。いや、多用できないはずだ。僕の考えが正しければ、その力は、君が本当に守りたいものを守るときにのみ行使できるものだ。ただ、反動があまりにも大きい。今回はこの程度で済んだけど、力を使いすぎれば、それは自分の命を削ることになる」

最後に、フォルトが真剣な目でエリオルを見て、こう言った。

「この話は、僕と君だけの秘密だ。セティアにも黙っておいてくれないか。」

エリオルは、ただ頷くだけしかできなかった。

そういえばといった様子でフォルトがもう一つ尋ねてきた。

「君は、あの月の浜辺で、どんな夢を見たんだい?」

エリオルが何か言うよりも早く、静かにドアをノックする音が聞こえた。

外からセティアの声が聞こえる。

「フォルト、もう終わったかしら? 入るわよ?」

フォルトは、仕方ないという顔をして、エリオルに「今のは忘れてくれ」と優しく言うと、部屋の外に向かって返事をした。

「ああ、治療は終わったから大丈夫さ。」


「エリオル…! もう、心配したんだからね!」

「ごめんね、アリス……。もう大丈夫だよ。」

セティアが小声でフォルトにだけ尋ねた。

「それで、さっきのあれは何だったのか、何か分かったの?」

「いや、まったく分からなかった。僕ができたのは一時的な体への負荷を治癒したことだけさ。」

セティアは不満そうな顔をしたが、フォルトは黙ってアリス達の会話に混ざりにいってしまった。

「何なのよ、もう!」

一人でぶつぶつ言うセティアの横で、部屋のドアがノックされた。

「あら? 誰かしら?」

セティアが部屋のドアを開けると、フードを被った人物が立っていた。警戒の色を見せるセティアに対して、フードの人物は静かに話し始めた。

「あの……お話があるんです。皆さんが城下のほうから来たと話しているのを宿屋の入口で聞いて……」

声から、フードの人物が女性であることが分かった。

そこで彼女は、ちらっとセティアの服を見て言った。

「それに、その紋章……、聖王教会の方ですよね」

セティアは訝しげにその人物を見ていたが、すぐに思い直したように口を開いた。

「追っ手…、ではなさそうね…………。こんな回りくどいことをする必要もないものね。それに、……いいわ、中で話を聞こうじゃない。」


部屋の中は静まりかえっている。先ほどのフードの人物からは緊張の色が見てとれた。エリオルは具合が良くなったこともあり、他の4人に並んで椅子に座っている。

「さて……」

フォルトが切り出した。

「我々二人は確かに聖王教会の教会騎士です。訳あって、あとの3人を護衛しているところです。」

そこで、いったん言葉を切り、フードの人物をまっすぐ見据えて言った。

「あなたも、正体を明かしてはくれませんか?」

「私は、その………」

フードの人物は言葉を濁す。

大きくため息をつきながら、呆れたようにセティアが言った。

「その指輪、もう少し隠したほうがよくありませんか? 王女様?」

ジェラルドが驚いて声をあげる。

「おいおい……、まさか、この人って…!」

それに対してフードの人物が申し訳なさそうに答える。

「皆さんを騙すつもりではなかったのですが……」

女性はフードを下ろし、指輪をはっきりと見せながら答えた。

「私は、セシリア・シャントゥール………モーゼル帝国の王女にあたります。」

セティアとフォルト以外の3人は、しばらくの間、驚きを隠せなかった。その中で、最初に口を開いたのはアリスであった。

「その指輪の紋章の一部って、私の指輪と同じ……」

フォルトが答えた。

「そうだね。モーゼル帝国と聖王教会は、もう10年以上の友好関係がある。モーゼル帝国の王家の方々の身に着けるものには、その紋章が入っているはずさ。」

まだ、驚きを隠せないままのアリスが尋ねる。

「では、あなたは、本当にこの帝国の王女様ということですか!?そんな方がなぜここに?」

「私は、訳あって城を抜け出しました。」

そう言うと、セシリア王女は悲しそうに眼を伏せた。

「この国は変わってしまいました。国王である父上をはじめとして、臣下の者たちや、街の人々まで……。今では、鉱山で採れる鉄鉱石を元に、他都市への侵略を目指し、密かに軍事力を高めています。」

セシリア王女の言葉を聞いて、納得したといった顔でフォルトが言った。

「なるほど、その邪魔をされないように聖王教会の介入を恐れているわけですね。」

フォルトの言葉に頷き、話を続けるセシリア王女。

「すべては、ルクゼスという男が城にやってきてからのことです。ルクゼスは父上に取り入って、自分の思うままに権力を掌握しました。今では国を動かしているのは実質的にはあの男です。」

セティアが率直な感想を述べた。

「何者かしらね、そのルクゼスって奴……。人ひとりならともかく、あの様子じゃ、おそらく城下全体の人間は洗脳されているわ。そうなる前に逃げ出してきたのがあなたってわけね、王女様?」

「はい……。私に力がないばかりに、父上を、民を救えないことが悔しくてしかたありません……」

それを聞いたセティアは、自信ありげな顔でこう言った。

「なら、私にいい考えがあるわ。」

モーゼル城

エリオル達は、セシリア王女と共にモーゼル城へと辿り着いた。

城内はざわついていた、行方不明となっていた王女の突然の帰還に、誰もが驚いているようだ。

フォルトが言う。

「この様子だと、王女に危害が加えられる心配はなさそうだな。洗脳も、すべての思考を支配するほどのものではなさそうだ。もしくは、対象に対して一時的に発動させるものかもしれない……」

セティアがセシリア王女に耳打ちする。

「いいわね、王女様。私の言った通りにやるのよ。」

「分かりました、セティアさん。あなたを信じます。ですが、最後に一つだけ……」

「何かしら?」

「どうしてわたくしのために、この国のために、ここまでしてくれるのですか?」

セティアは言うか言うまいか迷ってから、恥ずかしそうに小さな声で答えた。

「民を想うあなたの姿って、あたしの憧れている女の人にちょっと似ているのよ……」


一同はモーゼル城の玉座の間にたどり着いた。玉座に座る初老の男性がアドルフ帝だろうか。本来ならば威厳を感じさせるであろうその顔も、どこか心ここにあらずという感じで、ルクゼスによる支配を受けていることはどうやら明白であった。

セシリア王女が呼びかける。

「父上!!」

一瞬、アドルフ帝の目に生気が宿った。迷子になった子どもをようやく見つけたかのような優しい目で王女を見つめる。

「セシリア……よくぞ無事に戻ってきた。どこに行っていたのだ?そなたとて自分の立場が分からぬ年ではなかろう。王族の者が軽はずみに城を抜け出すなど、あってはならないことだ。だが、お前が帰ってきてくれて本当に安心したぞ。」

アドルフ帝の、心から王女を想う気持ちは、本物であるようであった。

「陛下、感動のご対面に水を差すようで恐縮ですが、少々よろしいですかな……」

それまで、玉座の後方に控えていた男が口をはさんだ。ローブを身にまとった、異常なまでに瘦せ細った男である。この男がルクゼスだと、エリオル達はすぐに悟った。

「セシリア様は、陛下に黙って城を抜け出し、あろうことか聖王教会の信徒どもをこの城に招き入れました。王女殿下には、しばらく自室で謹慎していただくのがよろしいかと。」

「しかしな……ルクゼス……、そこまでしなくてもよいのではないか? こうしてセシリアは無事に帰ってきたのだ。何も問題なかろう。」

「陛下……」

ルクゼスの声が一段と低くなった。その瞬間、禍々しい瘴気がルクゼスから放たれるのをセティアとフォルトは見逃さなかった。

「陛下……、これはあってはならないことなのです……」

アドルフ帝の目が吸い込まれるようにルクゼスの方を向く。そして、一度頷くと静かに言った。

「そうだな……。此度の件はさすがに見過ごせん……セシリア、すまぬがお前にはしばらくの間、己のしたことを顧みる時間が必要だ……。」

ここぞとばかりに、ルクゼスが付け加える。

「陛下、あの聖王教会の者たちも捕えねばなりません。お忘れなく……。」

「うむ……、そうだな。」

アドルフ帝はルクゼスの言葉をそのまま受け入れているようであった。

セシリア王女が会話に割って入る。

「待ってください、父上! この方々はわたくしの恩人です。その男の言葉に惑わされてはいけません! 目を覚ましてください父上!!!」

ルクゼスが冷たい目で王女を一瞥したのちに言った。

「どうやら、王女はあの者たちにたぶらかされているようです。陛下、わたくしめにお任せあれ。王女の心を清めて差し上げましょう。その後に、あの者たちへの処分を検討しましょう。」

ジェラルドが唸るように言った。

「あいつ、勝手なことを言って……」

ジェラルドの声など気にもしないかのような素振りで、ルクゼスはセシリア王女を見据えた。

「さあ、王女殿下……、こちらへ……」

「っ!?」

ゆっくりとルクゼスに向かって歩き始める王女。

「セシリア様!!」

「駄目よ、あなたまで奴に惑わされちゃ!!」

アリスとセティアの必死の呼びかけにも応じず、王女の足は、真っ直ぐにルクゼスの方へ向かっていた。

そのままルクゼスの前までくると、王女は黙ってルクゼスを見上げた。

「それで、よろしい…………。では、王女殿下……この本に手を…………」

ルクゼスは一冊の本を取り出した。それを開き、王女に差し出す。

フォルトが声をあげた。

「魔導書だ! あれで人々を操っていたのか!」

セティアも王女に声をかける。

「王女様、その本に触れちゃ駄目よ! あなたまで操られたら、この国はどうなるのよ!?」

王女は振り返らない。ゆっくりと右手を上げ、その手を魔導書へと伸ばす。それを見たルクゼスは満足そうに、セティアに向かって言う。

「ふふ、無駄ですよ、教会騎士殿。 この国はすでに私のもの……誰も我が道は阻めませんよ……」

そして、ルクゼスは改めて王女に命ずる。

「さあ、手をこちらに…………」

ルクゼスの言葉に引き寄せられるように、王女はその右手で魔導書に触れ…………

次の瞬間、ルクゼスの手にある魔導書を払いのけた。

「なっ!?」

驚くルクゼスに対し、勝ち誇ったように宣言するセティア。

「なんてね。どうやら作戦通りみたいね!」

ルクゼスは状況が呑み込めず狼狽する。

「何故だ!? なぜ傀儡の術式が効かない!?」

すぐに、はっと何かに気付き、叫んだ。

「セシリア王女! いったいその指輪はどうなさったのです!?」

落ち着いた声で王女が言葉を返す。

「我が友人、アリスさんから借り受けたものです。あなたからこの国を取り返すために!」

セティアが得意げに補足する

「最初からあんたの術式なんて効いちゃいなかったのよ! 王女様が演技上手なものだから、安心して見ていられたわ。その指輪は、聖王教会教皇たるアイリーン様が直々に作られたもの。よこしまな術式なんかは簡単に無力化するのよ!」

「おのれ、小癪な真似を…………。それならば、王女を始末した後でキサマら全員片づけてくれるわ!!!」

「あらあら、口調まで変わっちゃって! それが本性のようね。でも…………、」

言葉を続けたのはジェラルドとフォルトであった。

「俺たちのことも………」

「………忘れてもらっては困るな!」

ルクゼスが油断しているすきに忍び寄っていた二人が同時に切りかかる。

「なにっ!?」

慌てて武器を受け止めるルクゼス。だが、とっさに右を向いたルクゼスが受け止められたのはフォルトの一撃のみ。その背後から、ジェラルドの戦斧がルクゼスを貫いた。

「やったか!」

ジェラルドの一撃をもろに受けたルクゼスは、その場に倒れ伏し、起き上がってくる気配はない。

「……!?…………いや、やられたわね……」

苦々しげに言うセティア。それに対しジェラルドが疑問をぶつける。

「なに言っているんだ? 今の手ごたえ、もう生きているとは思えないぞ?」

「あー、もう……面倒なことになったわね……。確かに生きていないわ。というか、最初から生きてなんかいなかったのよ……」

ひとり悪態をつき、ついでといった様子でジェラルドに告げる。

「それ、人形よ……」


「父上、大丈夫ですか?」

「うむ、すまぬな……。だが、余はいったい……?」

正気に戻ったアドルフ帝をいたわるセシリア王女。その横に控えていたフォルトが声をかける。

「お初にお目にかかります、アドルフ陛下。あなたは煉獄の使徒に操られていたのです。恐れながらお伺いします。モーゼル帝国は、聖王教会と敵対するご意思はおありですか?」

アドルフ帝は、とんでもないというように首を横に振った。

「まさか! そのような考えは持ったことはない! そなたは、教会の者か……。ならば分かるであろう……? 我が国と聖王教会との間に確固たる絆があることを。」

「その言葉を聞いて安心しました。陛下は悪い夢を見ていたのでしょう。その悪夢から覚ましてくれたのは、他ならぬセシリア王女です。」

その言葉で、改めて王女を愛おしげに見つめるアドルフ帝。

「心配をかけたな、セシリア……。それに諸君にも礼を。この国を救ってくれたこと、本当に感謝する。」

「しかし陛下、まだルクゼスの脅威は去ったわけではありません。奴が今どこに潜んでいるか分かりませんか?」

フォルトの問いに、アドルフ帝は即答することはできなかった。

「分からぬ。まさか、余の側に控えていたのが替え玉であったとは……」

その時、玉座の間に一人の兵士が走りこんできた。兵士は、乱れた呼吸を整える間もなく報告した。

「へ、陛下……、ご報告します!……帝国北部にてルクゼス卿が反乱を起こし、ソルヴィ砦に侵攻…………、怪しげな兵を率いてソルヴィ砦を完全に占拠したとのことです!」

「何だと!?」

アドルフ帝が驚き、声をあげる。

それを見ていたフォルトが進言する。

「陛下。聖王教会の名のもとに、同胞たるモーゼル帝国を救うため、我ら教会騎士が、かの逆賊を討ち取って見せましょう。」

ソルヴィ砦(門)

「さて、今さら言っても仕方ないけど…………、危険だから君たちには城下で待っていてほしかったのだけどね………」

苦笑するフォルトにセティアが言う。

「無駄よ、フォルト……、この子たち、大人しく待ってるわけないわ。」

「まあ、そういうことさ。あのルクゼスって奴に今度こそ一撃を食らわせてやらないとな!」

そう言うとニカッと笑うジェラルド。

一段と真剣な顔でフォルトが言う。

「なんにせよ、用心してくれ。改めて確認するが、僕たちの任務は、あの男、ルクゼスの討伐だ。砦内の敵は、アドルフ帝が貸してくれた部隊に任せ、僕たちは最短ルートで砦の最奥を目指す。みんな、全力を尽くそう!」

団結する一同の前に、操り人形のような姿をした兵士たちの守る門が見えてきた。

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv25)
65001700800200
アリス
(Lv25)
5400500200800
ジェラルド
(Lv25)
72001500800100
セティア
(Lv25)
5600600200600
フォルト
(Lv25)
62001100400400
敵データ
  • 人形兵(槍)
  • 人形兵(弓)
  • 属性:無属性  HP:4,800

    攻撃力:1,600  防御力:300  魔法防御力:300

    移動力:5  攻撃射程:4

    技名 射程 効果
    通常攻撃 4 単体に 無属性の物理ダメージ1,600
    エイミングスロー 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ1,600
    スイングスピア 4 円範囲(自身中心:4マス)に 無属性の物理ダメージ1,600 + 吹き飛ばし3マス
  • 属性:無属性  HP:3,200

    攻撃力:1,400  防御力:200  魔法防御力:200

    移動力:5  攻撃射程:7

    技名 射程 効果
    通常攻撃 7 単体に 無属性の物理ダメージ1,400
    アローレイン 7 円範囲(対象中心:5マス)に 無属性の物理ダメージ1,200
    フラッシュアロー 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ1,400 + 20%の確率で暗闇

ソルヴィ砦(中庭)

無事に門を突破した一同は、広い中庭で敵に囲まれていた。

「まったく……、こいつら次から次に現れるな」

ぼやきながら戦斧を振るい、先に進むジェラルド。

アドルフ帝の兵たちに後を任せ、中庭を突っ切るエリオルたち。その眼前に、巨大な人形兵が姿を現す。

「そう簡単には進ませない、ってところかしら?」

セティアがため息をついた。

≫≫「ミリオンダラー」戦 ≪≪

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv25)
65001700800200
アリス
(Lv25)
5400500200800
ジェラルド
(Lv25)
72001500800100
セティア
(Lv25)
5600600200600
フォルト
(Lv25)
62001100400400
敵データ
  • 人形兵(剣)
  • 人形兵(魔法)
  • ミリオンダラー
  • 属性:無属性  HP:3,800

    攻撃力:1,400  防御力:200  魔法防御力:200

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,400
    連斬 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,800
    ソニックエッジ 7 円範囲(対象中心:3マス)に 無属性の物理ダメージ1,400
  • 属性:無属性  HP:2,600

    攻撃力:1,400  防御力:0  魔法防御力:400

    移動力:3  攻撃射程:10

    技名 射程 効果
    通常攻撃 10 単体に 無属性の魔法ダメージ1,400
    ファイアボール 10 単体に 火属性の魔法ダメージ1,600
    レイン ALL 敵全体に 水属性の魔法ダメージ1,000
    トルネード 10 円範囲(地点中心:5マス)に 風属性の魔法ダメージ1,200 + 円範囲中心に吸い寄せ
    サンダー 10 敵単体に 雷属性の魔法ダメージ1,200 + 20%の確率でマヒ
    グランド 10 敵単体に 土属性の魔法ダメージ1,600
  • 属性:無属性  HP:37,000

    攻撃力:2,800  防御力:300  魔法防御力:300

    移動力:4  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,800
    サイドワインダー 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,000 + 50%の確率でマヒ
    ミラージュダガー ALL 敵全体に 無属性の物理ダメージ2,000 + 20%の確率で混乱

ソルヴィ砦(最奥)

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv25)
65001700800200
アリス
(Lv25)
5400500200800セイント
ジェラルド
(Lv25)
72001500800100
セティア
(Lv25)
5600600200600プラズマ、フレイムウォール
フォルト
(Lv25)
62001100400400スノウ
敵データ
  • 人形兵(小剣)
  • 人形兵(斧)
  •   
  • 属性:無属性  HP:3,800

    攻撃力:1,400  防御力:200  魔法防御力:200

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,400
    アサシンダガー 7 単体に 無属性の物理ダメージ1,200 + 50%の確率で毒
    サイドワインダー 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,200 + 50%の確率でマヒ
  • 属性:無属性  HP:4,400

    攻撃力:1,800  防御力:300  魔法防御力:300

    移動力:5  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,800
    アクスボンバー 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,200 + 吹き飛ばし5マス

砦の奥から声が響く。ルクゼスが、待っていたと言わんばかりに一同を出迎えた。

「ふん、やはりあの程度の人形兵などたやすく退けるか…………。だが、自ら死地に飛び込んでくるとは馬鹿な奴らめ!」

「倒されるのはあんたの方よ! 煉獄の使徒!」

「うるさい! キサマらだけは許せん…………わしに立てついたこと、必ず後悔させてやる!」

ルクゼスとセティアのやり取りを黙って聞いていたエリオルが、すっと前に歩み出た。

「ひとつ聞かせてよ、ルクゼス………。お前はどうしてこの国を狙ったの?」

「はっ! くだらん!そんなことか…… ある程度の軍事力があり、手駒にしやすければどこでもよかったのだ!」

「そう…………、そんな理由で、この国を…………。民を想う王様を操って、平和に暮らす人々を脅かして……。許せないよ、そんなの!」

「よく言ったぜ、エリオル!」

エリオルの肩をぽんと叩くジェラルド。

「俺も、今度こそ ”本物の” お前に一撃食らわせたくて、ここまで来てやったんだ。感謝しろよ、ルクゼス!」

「ええい、よく吠えるガキどもだ! 全員まとめてあの世に送ってやる!!!」

ルクゼスが何か唱えると、その周囲に瘴気をまとった3体の人形兵が現れる。

「みんな、来るぞ! 気を付けて!」

フォルトが叫ぶと同時に、ルクゼスとの戦いが始まった。

Boss戦

ルクゼス

属性:無属性  HP:44,000

攻撃力:2,000  防御力:200  魔法防御力:1,000

移動力:5  攻撃射程:10

技名 射程 効果
通常攻撃 10 単体に 無属性の魔法ダメージ2000
マリオネット 7 単体に 100%の確率で混乱
シャドウバースト ALL 敵全体に 闇属性の魔法ダメージ2,000
【Rイリュージョン】 ※特殊能力※
自身の被ダメージ直前に、20%の確率で発動。
ランダムで敵1体と入れ替わり、代わりに攻撃を受けさせる

アビスドールRn5301

属性:無属性  HP:24,400

攻撃力:2,200  防御力:500  魔法防御力:500

移動力:5  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,200
アクスボンバー 2 単体に 無属性の物理ダメージ2,400 + 吹き飛ばし5マス
トマホーク 7 単体に 無属性の物理ダメージ1,800
※一番遠くの敵を狙う
フルブレイク 2 単体に 無属性の物理ダメージ3,000
※このダメージは防御力により軽減されない。

アビスドールRn0892

属性:無属性  HP:24,400

攻撃力:1,800  防御力:500  魔法防御力:500

移動力:5  攻撃射程:7

技名 射程 効果
通常攻撃 7 単体に 無属性の物理ダメージ1,800
アローレイン 7 円範囲(対象中心:5マス)に 無属性の物理ダメージ1,400
フラッシュアロー 7 直線範囲(幅:3マス)に 無属性の物理ダメージ1,800 + 20%の確率で暗闇
影縫い 7 単体に 無属性の物理ダメージ1,800 + 100%の確率でマヒ

アビスドールRn4913

属性:無属性  HP:24,400

攻撃力:1,800  防御力:500  魔法防御力:500

移動力:5  攻撃射程:10

技名 射程 効果
通常攻撃 10 敵単体に 無属性の魔法ダメージ1,800
ファイアフォース 10 円範囲(対象中心:3マス)に 火属性の魔法ダメージ2,000
レイニング ALL 敵全体に 水属性の魔法ダメージ1,000
トルネード 10 円範囲(地点中心:5マス)に 風属性の魔法ダメージ1,200 + 円範囲中心に吸い寄せ
サンダースフィア 10 円範囲(対象中心:3マス)に 雷属性の魔法ダメージ1,200 + 20%の確率でマヒ
グランド 10 敵単体に 土属性の魔法ダメージ2,500

「くっ、我が傀儡の術式の効果が打ち消されるだと……、やはりそこの小娘の指輪の力か……。ならば、まずは、あ奴から………。ふむ、そうだな………。」

ルクゼスが口の端を醜く歪ませて笑う。

「そうだ、それがいい……」

ルクゼスの目がすぐ近くにいたエリオルをとらえた。

「わしの目を見ろ!わしの声を聴け!我が目は魔、我が言は言霊……キサマはその手で、あの小娘を始末するのだ!!!」

「なっ!!!」

驚くエリオルの目をルクゼスの目がとらえる、その耳をルクゼスの声が覆いつくす。

「さあ、キサマの心を支配してやろう!」

言葉と同時に何かに吸い込まれるような強烈な感覚がエリオルを襲う。

身体の自由がきかない、駄目だと分かっているのに、ルクゼスの目から視線を逸らすことができない。

「やめ、ろ……僕はアリスを傷つけたくなんかない……」

「ふん、そんな強がりを言っていられるのも今のうちだ!さあ、心の中を見せてみろ!!!」

一瞬、ほんの一瞬、その場の全員が、時間が止まったかのような感覚に襲われた。


「む、これは…………。小僧の精神世界か。ふふ、この程度の心などたやすく掌握でき…………、? 何だ? 何だこの光は? こんなものがなぜ、こ奴の心に!? ま、まずい、これは駄目だ…………これでは逆にわしが…………」


「ウァァァアアアー!!!」

周りの者が認識できた事象は、ただルクゼスが急に叫びだしたということだけであった。先ほど、エリオルの心を支配しようとしていた時の余裕は今や影も形もなく、うろたえ、怯え、何かを恐れているようであった。

「何だ!? 何者だキサマ!? なぜ心の中にそんなものを宿している!!」

「な、何を言っているんだ……?」

エリオルには、ルクゼスの言葉の意味も、その豹変の理由も分からなかった。

ルクゼスは、よろめきながらも、呪詛のようにぶつぶつと呟く。

「駄目だ、駄目だ!こ奴は駄目だ……。 やはり、わし自ら、まずはあの小娘を始末して………」

よろよろとアリスの方へと向かうルクゼス。

それを見たエリオルの表情が変わった。すぐにアリスを背に両腕を広げ、二人の間に割って入った。

「エリオル……」

アリスが心配そうにエリオルを見た。

「大丈夫だよ。」そう、アリスに伝えると、ゆっくりとルクゼスに向き直った。そして堂々と言い放つ。

「お前が何を見たのかは知らない。お前の言っていることも分からない。でも、これだけは言える!」

改めてルクゼスをにらみつけ宣言するエリオル。

「アリスを傷つけることは、僕が許さない!!!」

そのまま、剣に手をかけ、ルクゼスに向ける。

「消滅しろ! 煉獄の使徒!!!」

エリオルの剣がゆっくりとルクゼスを貫く。

「ばかな…………、ばかな、こんなことがあってたまるか……! わしは、わしは!!!……」

それがルクゼスの最後の言葉になった。

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