第1部 第1章

alice

トゥール大聖堂

「お手伝い、ですか?」

アイリーンが不思議そうな顔をする。

「はい、義母さま。私たちも式典に向けて、何かお役に立ちたいのです。」

「昨日のこともありますし、あなた方には市内で寛いで居てもらいたいものですが…」

少し困った顔をするアイリーン。

「ですが、どうしてもと言うのなら、これを。」

1通の手紙を取り出すアイリーン。

「ルルド村の村長宛ての手紙です。これを届けて貰えますか。あの村なら街道沿いにすぐ着きますし……そうですね、セティアとフォルトを護衛に付けましょう。」

トゥール郊外

ルルド村へ向けて街道を進む一行。

セティアがぶつぶつと文句を言う。

「何で私が護衛の任務なんて…」

フォルトがこっそりとエリオル達に耳打ちする。

「セティアのことは気にしないで。もともと、煉獄の使徒の討伐が彼女の任務だからね。それ以外のことに興味を示さないんだ。」

昨日の男もどうやら現れる気配はない。アイリーンの言うとおり、村まではすぐに辿り着くのであった。

ルルド村

「ずいぶんと静かな村だね。」

エリオルが率直な感想を述べた。

「いや、普段はもっと活気のある村なんだけど…」

フォルトが不審そうな顔をする。村の中心であろう広場にも人影が無かった。

「ねえ、エリオル。今、向こうから何か聞こえなかった?」

アリスの指差した先は、一軒の家屋の裏であった。

恐る恐る裏に回ってみると、口元が軽く血で染まった少女と、倒れている小さな子どもが目に入った。

「なっ!?」

ジェラルドが思わず声を上げる。

「あら。」

少女の方はあまり驚いた様子もなく、静かに口元を拭った。

セティアが訝しげに尋ねた。

「あんた、魔族ね?」

あきらかに敵意を向けているセティアに対して、少女は落ち着いて答えた。

「ええ、そうですけど。そういうあなたも生粋の人間ではなさそうですわね。見たところ、エルフと人間のハーフといったところですかしら。」

少女の言葉にセティアが沈黙で答えた。

少女が言葉を続ける。

「用事も済みましたし、この村にも、もう用はありませんわね。」

そのまま立ち去ろうとする少女。

それを制するように一歩前に出て、フォルトが強い口調で言った。

「それは困るな。教会騎士として、怪しい者を野放しにはできない。」

リースは仕方ないという顔をして、一同に向き直った。

「……仕方ありませんわね。戦いはあまり好みではないのですけれど、このまま逃がしてもいただけないようですし……」

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv10)
31001000300100三段切り
アリス
(Lv10)
24003000300ピュアウォーター
ジェラルド
(Lv10)
35008003000
セティア
(Lv10)
25003000200
フォルト
(Lv10)
2900600100100ファントム
Boss戦

リース

属性:闇属性  HP:14,900

攻撃力:800  防御力:0  魔法防御力:200

移動力:7  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ800
吸血 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,200 + 与ダメージの100%分HP吸収
ブラッドサーキュラー 5 円範囲(自身中心:5マス)に 無属性の物理ダメージ800 + 与ダメージの100%分HP吸収
闇の瞳 2 闇属性物理 単体に 50%の確率で魅了
ダークネス 10 単体に 闇属性の魔法ダメージ1,200

戦いの末、魔族の少女が武器を降ろして呟いた。

「夜間ならともかく、昼間ではこの人数を相手にするのは厳しいですわね…」

フォルトがゆっくりと尋ねる。

「君は “吸血鬼“ だね。この村に人が居ないのは君の仕業かい?」

「”吸血鬼”……その名で呼ばれるのはあまり好きではないのですけれど……」

苦々しげな表情をしながら少女が言葉を続ける。

「確かにわたくしは、夜を生きる一族の者ですわ。名前はリースと言います。それからこの村ですけれど、わたくしが来た時には、その子の他には誰も見当たりませんでしたわね。その子もじきに目を覚ますでしょう、軽く血をいただいただけですから。」

疑わしげな目でリースを見ながらセティアが言った。

「あんたの言うことを信用したわけじゃないけど……まずはこの子が目を覚ますのを待ちましょう。いいかしら、フォルト。」

「ああ、先ほどの広場に戻ろうか。君はエリオル達とその吸血鬼さんを見張っていてくれるかな。僕はもう一度、村全体を見回ってみるよ。」


広場に戻ってきたフォルトがセティアに告げた。

「やっぱり村の中には誰も残っていないみたいだね。あの女の子は目を覚ましたかい?」

「アリスが見てくれてるわ。それにしても本当にあんたの仕業じゃないんでしょうね。」

セティアがリースを睨みつける。

「ですから、何度も言っているでしょう。わたくしは、ちょっとした“食事”に立ち寄っただけですわ。」

セティアは、まだ疑わしそうにリースを見ていたが、ふいにアリスが声を上げた。女の子が目を覚ましたようである。

女の子はゆっくり身体を起こすと、焦点の合わない目で辺りを見渡した。

アリスが優しく声をかける。

「大丈夫、どこか痛いところはない?」

「ぅ、ん…」

まだ、意識がはっきりとしないようである。

「私はアリス。あなたのお名前は?」

「……リズ。」小さな声で女の子が答えた。

「そう。いい名前だね。お父さんやお母さんはどこに居るか分かる?」

アリスの問いに、まだ若干虚ろな目をしながらリズが答えた。

「お父さんは、いないの……お母さんは村のみんなと一緒にどこかに行っちゃった。」

そして、寂しげな表情で付け加えた。

「明日は私のお誕生日だって言ってたのに…」

リズの言葉に一同は首をかしげる。

アリスが再び尋ねた。

「みんながどこに行ったのか分かるかな?」

「森のほう…」リズが村の南東を指差した。

リースが呟く。「確か、森の先に小さな洞窟がありましたわね。」

それを聞いたフォルトがしばし考えた後に言った。

「手掛かりが他に無い以上、そこに行ってみるしかなさそうだな。問題はこの子をどうするかだけど…」

それを受けてリースが言う。

「仕方ありませんわね。このまま放っておくのも気が引けますし、わたくしが見ていますわ。当面、傷を癒すためにもここから動けませんし……まあ、あなた達がいつまでも帰って来ないというのなら、その時はわたくしの知った事ではありませんけど。」

セティアが噛みつくように言った。

「ちょっと、こんな奴にこの子を預けて行くの!?」

答えたのはアリスだった。

「私は、リースさんを信じるよ。リズちゃん、この人と一緒に待っててくれるかな。必ずお母さんを連れて帰ってくるから。」

「うん…分かった。アリスお姉ちゃん。」

リースとリズを村に残し、失踪した村人たちを探しに5人は森の先へ向かった。

亡霊の巣窟

パーティー
HP攻撃防御魔防習得
エリオル
(Lv10)
31001000300100
アリス
(Lv10)
24003000300ウェーブ
ジェラルド
(Lv10)
35008003000パワーチャージ
セティア
(Lv10)
25003000200バーニング、サンダー、クエイク
フォルト
(Lv10)
2900600100100スパイラルランサー
敵データ
  • ゾンビ
  • ゴースト
  • スケルトン
  • スケルトンソルジャー
  • ヘルタースケルター
  • 属性:無属性  HP:2,200

    攻撃力:500  防御力:0  魔法防御力:0

    移動力:3  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ500
  • 属性:闇属性  HP:1,000

    攻撃力:500  防御力:2,000  魔法防御力:0

    移動力:6  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ500
    ウィンド 10 単体に 風属性の魔法ダメージ800
  • 属性:無属性  HP:1,800

    攻撃力:600  防御力:200  魔法防御力:0

    移動力:4  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ600
    ボーンダート 7 単体に 無属性の物理ダメージ600
    ※一番遠くの敵を狙う
  • 属性:無属性  HP:2,700

    攻撃力:800  防御力:300  魔法防御力:0

    移動力:4  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ800
    連斬 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,000
    ボーンダート 7 単体に 無属性の物理ダメージ800
    ※一番遠くの敵を狙う
  • 属性:闇属性  HP:11,200

    攻撃力:1,200  防御力:0  魔法防御力:0

    移動力:3  攻撃射程:2

    技名 射程 効果
    通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,200
    体当たり 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,200 + 50%の確率でスタン + 吹き飛ばし3マス
    吸血 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,000 + 与ダメージの100%分HP吸収
    溶解液 5 円範囲(対象中心:3マス)に 無属性の物理ダメージ600 + 防御力100ダウン

エリオルが呟く。

「これが、リースの言っていた洞窟か。なんだかとても不気味だけれど。」

「この気配、まさか…」 「うん、たぶん煉獄の使徒が絡んでるわ。」

フォルトとセティアが頷きあった。

教会騎士である二人でなくても、洞窟の奥底から溢れ出てくる瘴気は容易に感じ取ることができた。

「それにしても気味の悪い魔物ばかりだな」

ジェラルドの言葉に一同も頷く。死者や霊魂と言えばいいのだろうか、そういった類の魔物が一行の前に現れては襲いかかってくる。その数が少ないのがまだ救いだろうか。

そのまま進むうちに、大きく開けた場所に出た。

「これは、祭壇?」

エリオルが思わず声を上げる。「何でこんなところに…」

禍々しい瘴気は明らかにそこから放たれていた。

突如、不気味な声が皆の耳に響く。

「新タナ贄ガ迷イコンダカ。貴様ラニモ永遠ノ安寧ヲ…」

「くっ、やはり!」 「みんな、気をつけて!」

フォルトとセティアが声を上げる。

直後、甲冑と瘴気を身に纏った骸骨の騎士が現れた。

「こいつは…!?」

驚くジェラルドたちを尻目に、フォルトとセティアは状況判断に努めていた。

「彼らも居るし、いったん引くべきかな。」

苦々しい顔で言うフォルトに対しセティアは答えた。

「冗談でしょ! 他の教会騎士どもに任せたくなんかないわ。それに、どのみち逃がしてなんてくれないわよ。」

不気味な声が再び響く。

「死ニ身ヲ委ネヨ…」

Boss戦

アラゾール

属性:闇属性  HP:32,400

攻撃力:1,000  防御力:200  魔法防御力:0

移動力:5  攻撃射程:2

技名 射程 効果
通常攻撃 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,000
連斬 2 単体に 無属性の物理ダメージ1,600
カマイタチ 5 円範囲(自身中心:5マス)に 無属性の物理ダメージ1,000
ポイゾナスブロウ 7 円範囲(対象中心:5マス)に 無属性の物理ダメージ800 + 50%の確率で毒
ダークバインド 10 単体に 闇属性の物理ダメージ1,200 + 100%の確率でスタン
ダークソウル 10 直線範囲(幅:3マス)に 闇属性の魔法ダメージ1,000
冥界波 ALL 敵全体に 闇属性の物理ダメージ1,000 + 20%の確率で悪霊 + 与ダメージの50%分HP吸収

激しい戦いの末、何とか煉獄の使徒を退けるエリオル達。

「グッ…死ハ至福。モット多クノ者ニ死ヲ…」

そう言い残すと、煉獄の使徒は消滅し、辺りに満ちていた強い瘴気が消えてゆくのが感じられた。

「何とかなったわね…」

「ああ、ぎりぎりだったけどね。」

さすがの教会騎士二人も満身創痍のようである。

そんな中アリスは、祭壇の陰に隠れるように倒れ伏している一体の骸を目にした。

何か嫌な予感がする。見てはいけない、そんな思いがアリスの脳裏をよぎる。

近づいてみると、女の骸のようである。手には、元はきれいな手紙だったのであろう一枚の紙切れを持っていた。

震える手でそれを開くアリス。

『お誕生日おめでとう。あなたに聖王様の祝福がありますように。愛するリズへ。』

手紙を手にしたまま崩れ落ちるアリス。慌てて駆けつけたエリオルたちにも構わず、アリスはただ泣き続けるのであった。

ルルド村

「結局、あの煉獄の使徒が村人を操って攫っていたみたいね。」

「俺たちの倒してた魔物が、村の人たちのなれの果てだと思うと気分が悪いな…」

言葉を交わすセティアとジェラルドも明らかに憔悴しきっているようだ。

村の奥からリズが駆け寄ってきた。後に続くリースは、一同の様子を見て事の顛末を察したようであった。

「アリスお姉ちゃん、お帰りなさい! 私、いい子で待ってたよ!」

「……………」

「お姉ちゃん。お母さんは?」

「っ!…………。ごめん、ね…」

「お姉ちゃん?どうしたの?」

「ごめん、ね………」

「お姉ちゃん?」

アリスはそれ以上何も言えず、不思議そうな顔をするリズを抱きしめて泣いていた。

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